原：

素材にはこだわりました。座敷の部分は滋賀県で生産されている黒竹と言います。最初、コーディネーターからの提案はもっと太い竹でしたが、黒竹の方が繊細さを感じますし色も落ち着いているので、こちらを使いました。店舗などでよくあるのは、止めているビスが見えていたり、真ん中につなぎ目があったりしますが、無駄な物を省いて、天然素材の持つ風合いを生かしました。

西村：

竹は反るので本来はつなぎ目があったほうが安定するのですが、あえてそれを無くし、すっきり見せている所がポイントです。でも、竹の固定方法について何度も集まって検討しましたね。天井に竹を固定するためのビスは外側から見えないように竹の内側に打つなど工夫しています。こんなにたくさん並べるとは思っていなかったのですが、竹のスリットを通る光も美しく映えるように配置されています。

原：

キッチンには枯山水を作りたかったんです。水場にある枯山水という存在。既成の概念にとらわれない魅せるキッチンで、暮らしの豊かさを感じてほしいという思いを込めています。ビルトインキッチンは、スマートな印象のドイツのメーカー“GAGGENAU(ガゲナウ)”。土台にはモルテックスを使って、コンクリートっぽい素材感がありながら他を邪魔しない雰囲気をつくっています。

西村：

枯山水？って、一瞬使い方が分からないと思ってしまうけど、そういうことじゃない。実用性を超えたところに、創造性や遊び心がある。後ろの吊り戸棚も、引き戸が組子になっていて、丁寧で細かな手仕事に、職人の粋を感じてほしいですね。

原：

最初から振り返ると、予算内で最大限ハイレベルな物にしようという思いがありましたね。見積もりを取りながら、変更もあり、間取りもまだ決まっていなくて、予想につぐ予想みたいな状況で。さまざまな意見も入ってきていて、とりあえず、ゴールへの方向性は見えていたのですが、その方向に走り出すしか。

西村：

3回ほどひっくり返ったような（笑）。そのたびに原点がどこか、向かうべきはどこか、探るような状態でしたね。大まかな間取りは決まっていたけど、それ以外の細かくどう使うというのは全然決まっていなかったからね。毎日会議だったけど、それだけみんなのこだわりを表現したかったということかな。

原：

そうかもしれないです。こだわった部分では素材の選定が一番難しかったですよね。いい物を作るというコンセプトと予算との兼ね合い的にも。普段よりもハイエンド向けの素材とか、あまりない珍しい素材を使ったりしていて、普段使わないから塗装の色も一筋縄ではいかなくて困りました。

西村：

色って、フローリングの話？あれはメーカーさんに、もうその色作ってないって言われてね。塗装屋さんにお願いして独自に作ってもらって、横に並べて見比べながら色合わせして。けっこう初めての試みが多かった分、なかなか思い通りに施工できなかったり、フラッグシップだからこその苦労というか。

原：

そうですね、とにかくお客様がいっぱいいる感じ（笑）。そんな中で自分たちを信じて、決断しなければならなかった。逆に、それだけ任せてもらえているんだと思って奮闘しました。その甲斐あって、西村さんを含め職人さんや大工さんに、本当に美しく仕上げていただけたので感動しましたし、私から気付くべきことをプロジェクトの中で助言いただいたりして、相談しながら進めさせてもらったのはありがたかったです。

西村：

どうやれるかを考えましたね。例えば、木造で内壁の大断面にタイル貼るってほとんどやったことがなかったし、木材との相性が悪いので、壁の中に緩衝材を入れたり、大工さんには下地を動かないように固めてもらうとか。いろんな要望に現場で応えながら、細かいところまでこだわって仕上げるのが大変でしたね。

原：

壁紙や床材など、下地が目立ちやすい物の仕上げを見て、他社で経験を積んだ中途入社の社員に、「こんなきれいな納まり見たことない」って言ってもらえたり、SAWAMURAの場合は、みんな意識してやってくださっている感じがします。継ぎ目がわからないとか、ズレがないとか、正確さとか全部が当たり前になっているのがすごいことで、それができている会社って意外と少ない。時間をかけて丁寧にやってきたからこそ、今のレベルがあると思うんです。

西村：

普通だと思っているから実感がわかない部分もあるけど、経験値というか、しっかりとしたノウハウや蓄積があるからできている。地味な部分ほど手を抜かないから。それに技術面もそうだけど、モデルハウスとしてきれいに安全にしないといけないので、実用面やアフターメンテナンスも考えてそのバランスにも気を使っていますよね。

西村：

茅葺き屋根のある家かな。職人さんを探せば、施工的には難しくないし、雨が漏らないようにするのは難しいですけど、元から雨が漏る前提で造るんで。茅の所に炭でタール状にした膜を張らせて、軒まで雨が来たらOKというのが茅葺き屋根。少々雨が家の中に入っても、それが何か？という考え方。何をよしとするのかですね。現代的な空調がきいた過ごしやすい家がいいのか、隙間風だらけで囲炉裏にあたる方が健康的でいいのか。昔の田舎暮らしの家は手がけてみたいですね。新しい発見がある気がします。

原：

何だろうな。今までにやらせてもらったことのないことはやりたいかな、何でも。フラッグシップやHAARU、店舗併用住宅なども設計させてもらいましたが、まだまだ手がけていないことは多いですし。何かわからないですけど、滑り台があるとか？カラオケがあるとか？（笑）今、3階建のお家をやらせてもらっているんですが、初めてですし。やったことないことにいろいろと挑戦させてくださるお客様と出会って、一緒に考えながらつくっていく感じは楽しいなと思うので、毎回何か新しいことにチャレンジしていきたいです。