山田：

元は自転車屋さんの空き家で築40年の木造2階建を、当初はリフォームのモデルとして使用予定で解体だけした状況でしたが、1年ほどプロジェクトとしてどうするか、活用方法を社内でも模索していた期間がありました。使用用途が確定したタイミングで私は現場監督に任命され、施工を担当しました。

石原：

私は立ち上げメンバーとしてメインで入らせていただいていて、この建物をどう活用していくか、コンセプトやベースプランを作成していて、テナントで「旅の音」さんが入ると決まった段階でディレクションとして入り、旅の音さんとお互い相違のないように進めていきました。

山田：

「旅の音」さんが入って1階がコーヒースタンドとライブラリー、コワーキングスペースに決まり、既存の柱や梁などをあえて見せるプランになったので、配線は極力見えないように工夫しました。土壁なので寒くないように、屋根や壁にも断熱材を入れています。床は足場板を加工・塗装して汚れにくいようにし、外壁の焼き板も厚くして今後のメンテナンスにも配慮しました。

山田：

ライブラリーの本棚が思っていたより大変で、合板の箱を100個くらい積み上げて造ったような棚で、大工さんではなく家具屋さんに入ってもらったんです。本棚の一部は稼働扉で収納スペースもあります。玄関の建具も建具枠を無くして既存の柱に付けており、階段前の扉や引き戸など、ドアの種類も多彩で納まり的に難易度が高かったです。

石原：

2階の壁面に展示してお客様との打ち合わせで素材を見せるとか、吊り天井に調光できる照明を入れるとか、細かな使い方は旅の音さんとディレクションする側とで一緒に決めていきました。こっちがこうしたいというのを伝えて、社内での調整もしながら現場で合わせていくのが難しかったですね。

山田：

塗装もそうで、旅の音さんが合板にシルバー塗りたいというアイデアがありましたが、これが合っているのか、良しとするのか、がちょっと悩む所でした。やはり、私たちの思うOKと、旅の音さんの思うOKが微妙に違う部分もあるので、その辺をバランスよく進めていくのに苦労しました。

山田：

現場で上がったことが社内の上層部までスムーズに行って、決定を出してもらえる。細かな融通もききやすく、提案が実現しやすい自由さはSAWAMURAの良い所だと思います。例えば今回の場合も、勝手口の所に庇を付けたいっていう話だとか、その前にデッキ引きたいっていう話も、社長が直接現場を訪れて「いいと思う。進めよう」とか。

石原：

設計で言うと、本棚の形や大きさ、壁面まるごと一面という使い方も、2階の展示について円形にすることも、会議でも提示しましたが、最終的には「任せる」というような、結局は現場に委ねてもらえるのがSAWAMURAっぽいなと。SAWAMURAの規模感だからというのもあるかも。上層部と現場が近いのもあると思います。

山田：

逆に近すぎて、ここをこうしたら？というのはたまにあるけど（笑）。全社的に良くなるのであれば全然やってみても大丈夫という気風があるんじゃないかな。あと、旅の音さんのこんな風にしてくださいという話に対して、言われたままではなく、やりたいことや職人さんも含めていろんな提案をしながら進めましたね。

石原：

旅の音さん、施工管理、ディレクションする側がうまく機能しているので、間違った方向には進まない。こまめな進捗の報告やすり合わせもしてお互い補い合いながらベストを目指すというか。「人の輪、共創」というこの施設自体のコンセプトを、まず建設する側から体現できたような気がします。

石原：

今回ディレクションとして入らせていただき、プロジェクトを通して、元からある空間や素材の活かし方や、色んな物の取り入れ方や見せ方など、本当に勉強させていただいたことが多かったです。次にやってみたいのは、今回の経験を活かし、建物の素材の良さをより引き出せるリノベーションをしたいなと。

山田：

リノベーションか。暮らし方に合わせて新しいアイデアで作り変えるのが難しくもあり、楽しくもあるからね。私は、人が集まる所を作りたいなと。具体的に言うと……会社だったら、社員食堂とか（笑）。前に社長がおっしゃってた、まち丸ごとカフェにするというのは、実現したら面白いかな。

石原：

それはやってみたいですね。良い感じのカフェだったりショップだったり。地域の人とかがすごく来やすい場所というか、気軽にふらっと立ち寄れるおしゃれなカフェなどが、集まることで注目を浴びるエリアになれば。つくったことによって人が寄って来たらいいなと思います。Rin Takashimaも2店舗目3店舗目と増やしたいです。

山田：

それをまち歩きみたいにやっていくと面白そう。実際高島も田舎で人がいないので。地域貢献というか、そういう中で集まれる場所をつくって、そこが有名になってほしいですね。高島で言うとメタセコイア並木や白髭神社が目立っているのですが、それに並ぶくらいになったらすごいと思いますし、地方に来てもらう動機になればと思いますね。